― 「私」は「ワタシ」を生きていく ―

 

*私の選択

幼少期、つねに人の後ろを歩き、「引っ込み思案」と周りから言われていた私が将来、フィットネスインストラクターを職業に選ぶとは、全く予想だにしなかったことです。

私は、初めからフィットネスインストラクターになる道を進んできたわけではありませんし、この仕事に就くことを目指していたわけでもありません。

 

 

フィットネスインストラクターになる前、私は4年間銀行に勤めていました。

学生から社会人へとステージが変わり、毎日ケタ違いの金額を目にしながら必死に社会経験を積んでいた日々。今となっては懐かしい思い出、ありがたい経験ができたなと心から感謝しています。

多種多様でかなり細かい、膨大な量の事務処理業務そのものは、それを苦と思わない私に合っていたと思いますけれども、当時の私は心底疲れ切っていました。

 

ココロの疲弊の最大原因は、理不尽な人間関係。そのストレスで、私のカラダは今までに経験したことのない異常事態に。しかしながら、そんな状況下でも、これは社会人として自分が耐え抜かなければならない「修行の場」だと信じて疑わなかった私。いつかは苦境に耐える免疫がつくものと思い込み、カラダから発せられている必死の訴えは無視し続けていました。

 

日々奮闘しながら4年の月日が流れたある日。ココロの中でずっと張りつめていた糸がついに切れる瞬間は、いつもの日常業務の中で静かに訪れました。

「もう無理だ。このままでは自分が死んでいく。」

 

初めて感じた自分の限界。危機感すら覚えたとき、もうひとりの私がこう言ったのです。

「今までよく頑張った。ここにいる必要はない、次に行きなさい。」と。

 

自分で自分を解放する。誰に言われたわけでもない、自分の本能的行動。この時の思いはたったひとつ。

「後先のことなんてどうにでもなる。」

 

今までは先のことを心配するあまり、足踏みすることが多かった私のアタマに自然と浮かんでいたこの言葉。本当に自分の極限に達していたのだな、と思います。

 

 

*理想の自分とは

「自分らしい生き方をしたい」、「なりたい自分になりたい」。このような言葉を耳にする機会はとても多いですが、これを言い換えるなら、現実は「自分らしい生き方ができていない、わからない」、また「今の自分の姿は理想ではない」と悩みを抱えている人が多い、ということだと私は思います。

 

そもそも、「自分らしい」「なりたい自分」とはいったい、どういうことなのでしょうか?

頭の中で思い描く「感覚」としては持っていても、それを誰かに伝えられるよう言葉で表現するのは、できそうでなかなかできないものです。

 

 

*自分らしく生きるためのヒント

自分がイキイキとした自然体で生きるためのヒントは、これまで経験してきた「成功体験」や、「キーパーソンとの出会い」の中に隠れています。

これはまさに、私自身の経験から実感していることで、その中でも特に以下の2つが私の土台となっているものです。

 

 

【1.私の成功体験】

私は幼少期から短距離走がとても好きで、幸運なことに、人より速い走力の持ち主でした。学生時代は陸上部に所属し、100m・200mの短距離選手として、県大会優勝、東海大会・全国大会への出場を経験。(※自己記録/100m:12秒5、200m:25秒91)

「好き」と「得意」を掛け合わせて得た小さな成功体験の繰り返しや、その成功体験を得るために積み重ねた日々の努力は、その後何十年経った今でも「私はできる」という自信のもととなっています。かけがえのない私の財産です。

 

 

【2. キーパーソンとの出会い】

自分が出会うべき人とは、必ずしかるべきタイミングで出会うものです。

私がフィットネスの世界に足を踏み入れたきっかけは、前職を辞めた同時期、偶然近所にオープンしたスポーツクラブで働きはじめたことでした。そこで待ち受けていた、フィットネス業界の第一線で活躍している先生との出会いによって、私は導かれるようにフィットネスインストラクターの道へと進んでいったのです。

 

先生から言われた、今でも心に残る言葉。

「頑張っている自分をもっと褒めなさい。」

 

「まだ足りない」、「もっと頑張らなくては」、そういつも自分にプレッシャーを与え続け、極限まで追い込むことが成長過程には必要だと当たり前のように考えていた私にとって、この言葉はそれまでの思考、視点が180度変わる衝撃的なものでした。

物事の考え方には人それぞれのクセがあり、それはなかなか簡単には変わらないものですが、先生からのこの言葉をきっかけに「自分は頑張っているな」と、自分を褒める、認める考え方の重要性を知ったのです。

 

今までの私は人前で堂々とした自分になりたいと願いつつも、その要素は自分にはないものだと思い込んでいました。でも、それは思い違いであり、可能性は自分の中に眠り続け、ずっと出番を待ち続けていたのです。

そして、その出番を知らせたのは他の誰でもない、自分自身。

 

なりたいと思っていた姿は「理想」ではなく、「自分の自然体」だということに気が付いたのは、これまでに出会ったいろんな方の価値観に触れることで、自分で自分を褒める、認める、労わるというココロの持ち方、考え方が自分にもできるようになったからだと思います。

 

 

*自分がこれから歩いていく道

人生というのは、いつも自分のコントロール下で歩めるものではありません。時として、自分の力ではどうすることもできない、世の中の流れに飲みこまれることも多々あります。それを身に降りかかった不遇ととらえるのか、それとも、明るい未来を切り開く成長の場ととらえるのか。

 

生きづらさの原因は、自分の置かれた環境の問題だけではなく、自分の思考も大きく関係しています。行き詰まりを感じているときほど視野が狭くなり、物事をある一定の面だけでしか見ていなかったりします。

そんなときこそ固定観念を捨て、物事の考え方、見る角度を少し変化させると、ひとつにしか見えてなかった目の前の道がいくつもの選択肢に分かれた道に変わって見え、目の前の世界が広がっていくものです。

 

 

*フィットネスインストラクターとして願うこと

人はその時のココロ・カラダの状態や、環境に大きく影響されるため、うまくいっていたことでも、ほんの些細なきっかけでモチベーションが下がってしまい続けられなくなってしまいます。

この原因を、「自分の意思が弱いから」と思っている人はとても多いですけれども、実はそれだけが理由ではありません。

 

それぞれの人が持つ、それぞれの悩み、問題。

 

その人が今、どういう状況にいて、何を思うのかを把握しながら行うサポートの一番の目的は、段階ごとに「私にもできた」という達成感を感じてもらうため。なぜなら、その繰り返し得る達成感はやがて自信となり、目的達成への道に必ずつながるからです。

かつて、自分を信じることができなかった私だからこそ伝えられる、「自信」を持つということの意味、大切さ。

一人ひとりが望む明るい未来へ進むため、私がかける言葉の中から、自分の中に眠る「可能性」「自信」に気付いてもらえるように、そう願っています。